専門家から「おうちでも少し練習してみましょう」とアドバイスをもらったものの、実際どのくらい、どんなふうにやればいいのか分からない——そんな声をよく聞きます。
今日は、お家でできる発音トレーニングの具体的な方法と、頑張りすぎてしまったときのサインについて、詳しくお話しします。
お家トレーニングの基本の考え方
お家でのトレーニングは、専門機関でのプログラムとは違い、「直す」ためのものというより、「楽しく聞かせる・使わせる」ためのものと捉えるのがちょうどいいバランスです。
前回お話しした通り、「おうちでトレーニング」は、専門家が「今は在宅のサポートで十分伸びる」と判断した結果でもあります。だからこそ、身構えすぎずに、日常の延長として取り入れていくことが大切です。
具体的なトレーニング方法
方法①:遊びの中に音を混ぜ込む
しりとりや、絵本の読み聞かせの中で、気になる音を含む言葉を自然に出す、というやり方です。
- 気になる音(例:ラ行)が入った言葉をしりとりに混ぜる
- その音が繰り返し出てくる絵本を選んで読み聞かせる
- 歌やわらべうたの中で、楽しみながらその音に触れる機会を増やす
ポイントは、「直させよう」とせず、ただ一緒に楽しむことです。トレーニングという意識を持たせすぎないことが、長く続けるコツでもあります。
方法②:正しい音をさりげなく聞かせる(リキャスト)
子どもが間違えても、その場で指摘して直させるのではなく、正しい発音でさりげなく返してあげる方法です。
例えば、子どもが「いんごたべたい」と言ったら、「そうだね、りんご食べたいね」というふうに、正しい発音を含めた形で自然に返します。
この方法は「リキャスト」と呼ばれ、専門的な支援の場でもよく使われる手法です。
子どもに「間違いを指摘された」という感覚を与えずに、正しい音を耳から入れることができます。
方法③:口や舌をたくさん使う遊び
発音に必要な舌や口の動きそのものを育てる遊びも効果的です。
- しゃぼん玉やストローで息を吹く遊び(口の筋肉を使う)
- 舌で上唇・下唇を触る、舌を左右に動かすなどの「ベロ体操」
- 「ぱぴぷぺぽ」「らりるれろ」など、音のリズムを楽しむ言葉遊び
これらは、特定の音を直接練習するというより、発音の土台となる筋肉や動きを育てる遊びです。
やりすぎ注意点
ここからが今日一番お伝えしたい内容、「やりすぎ注意点」です。
実際に「もう一回言ってみて」を繰り返しすぎて、子どもが話すこと自体を嫌がるようになってしまった、というご相談もいただいています。
サイン①:子どもが話すこと自体を嫌がり始めた
「もう一回言ってみて」を繰り返しすぎると、子どもにとって「話す=直される」という経験になってしまいます。
その結果、話すこと自体が嫌になり、かえって発話の機会が減ってしまうことがあります。
もしお子さんが最近、口数が減った、話しかけても答えたがらない、と感じたら、一度トレーニングの頻度を見直すサインかもしれません。
サイン②:頻度が多すぎる
トレーニングは「1日に何度も」ではなく、「短く・楽しく・自然に」が基本です。
目安としては、1回数分程度、遊びの延長でさりげなく、というくらいがちょうどいいと言われています。何十分も机に向かって練習させる必要はありません。
サイン③:保護者自身が焦っていないか
実は、トレーニングがうまくいかないときほど、保護者側の「早く直したい」という焦りが子どもに伝わっていることが多いんです。
子どもは、大人が思っている以上に、大人の表情や声のトーンから「これは失敗なんだ」と感じ取ります。
もし今、毎日何度も練習させてしまっているなと感じたら、一度立ち止まって、「これは子どものペースかな、それとも自分の焦りかな」と振り返ってみてください。
専門家からの宿題を完璧にこなす必要はなく、できる範囲で続けることの方がずっと大事です。
トレーニングを続けるためのちょっとしたコツ
- 完璧を目指さない:毎日できなくても大丈夫。気が向いたときに、数分でOK
- 結果より過程を褒める:「言えた・言えない」ではなく、「楽しく話せたね」を大事にする
- 家族みんなで自然に:特定の誰かだけが「トレーニング係」にならないよう、家族全体で自然に取り入れる
- 専門家との定期的な振り返り:お家での様子を専門家に伝え、方法が合っているか定期的に確認する
おわりに
お家でのトレーニングは、遊びの延長として、無理なく続けることが一番大切です。
アドバイスを真剣に受け止めて実践しようとする気持ちは、とても素晴らしいことです。
そのうえで、「直す」より「楽しく聞かせる」を意識してもらえたらと思います。
今月は「発音」をテーマに4週間お届けしてきました。
相談のタイミングから、間違い方のパターン、相談後のモヤモヤとの向き合い方、そして今日のお家トレーニングまで、少しでも参考になっていたらうれしいです。

