「療育につながらなかった」は、見放されたわけじゃない

ことばの発達

思い切って発音の相談に行ったのに、療育にはつながらず

「おうちでトレーニングしてください」とだけ言われて終わってしまった

そんな経験をされた方から、実際にこんなお声をいただきました。

発音が気になって、思い切って相談に行ってきました。でも、療育にはつながらなくて、「おうちでトレーニングしてください」とだけ言われて終わってしまいました。せっかく勇気を出して相談に行ったのに、突き放されたような気持ちになって、正直どうしたらいいか分からなくなっています。

このお声を読んで、まず伝えたいのは、「相談に行く」という一歩を踏み出したこと自体、本当にすごいことだということです。

今日はこのモヤモヤを、少し違う角度から見ていきたいと思います。

「療育につながらなかった」の本当の意味

まず知っておいていただきたいのは、「療育につながらなかった」というのは、「問題なし」でも「軽く扱われた」でもない、ということです。

 

療育につながるかどうかの判断は、いろんな要素を総合的に見て決められます。

  • 発音以外の発達の様子
  • 日常生活への影響の大きさ
  • 今の段階でおうちでのサポートでも十分に伸びていく見込みがあるか

つまり、「おうちでトレーニングしてください」という言葉の裏には、専門家が「今この時点では、専門的な療育の場よりも、日常の中での関わりを増やす方が、この子にとって伸びやすい」と判断した、という意味が含まれていることが多いのです。

とはいえ、それが十分に説明されないまま一言だけで終わってしまうと、保護者としては「見放された」「これで終わり?」と感じてしまうのも、すごく自然なことだと思います。
説明が足りなかったこと自体は、決して保護者の受け止め方がおかしいわけではありません。

なぜ「療育につながらない」という判断になるのか

もう少し具体的に、療育につながらない判断がされる背景を見てみましょう。

1. 発音以外の発達に大きな遅れが見られない

療育は、限られたリソースの中で、より支援が必要な子どもから優先的につながることが多いのが実情です。
発音以外の面(言葉の理解、コミュニケーション、運動発達など)に大きな心配がない場合、「まずは家庭でのサポートと経過観察」という判断になることがあります。

2. 年齢的にまだ自然な発達の範囲内である

前回や前々回の記事でお話ししたように、発音には音ごとに獲得の順番があり、特にサ行・ラ行は5〜6歳頃まで不安定でも自然な範囲です。

年齢的にまだ様子を見てよい段階だと判断されることもあります。

3. 地域や施設によって受け入れ体制が異なる

療育機関の数やキャパシティは地域によって差があります。

「今は空きがない」「もう少し年齢が上がってからの方が適切な支援につながりやすい」といった、体制側の事情が関わっていることもあります。

「どうしたらいいか分からない」を、次の一歩に変える

ここからは、実際にどう動いたらいいか、具体的にお話しします。

① もう少し詳しく教えてもらう

相談の場では、限られた時間の中で説明が駆け足になってしまうこともあります。

「おうちでのトレーニングって、具体的に何をどのくらいやればいいですか」

「これはどのくらいの期間様子を見ればいいですか」と、遠慮せずに聞き返していいんです。

分からないことをそのままにせず、聞き返すことは、決して失礼なことではありません。

② 気になることを記録しておく

「こういう場面で聞き取りにくかった」「こういう言い方が増えてきた」というのを、日付とあわせてメモしておくと、次に相談するときにとても役立ちます。

記録があることで、専門家も状況を正確に把握しやすくなり、より具体的なアドバイスにつながります。

③ 次の相談のタイミングをあらかじめ決めておく

「1回で終わり」ではなく、「3か月後にもう一度様子を教えてください」というふうに、次のチェックポイントを自分の中で決めておくと、モヤモヤしたまま放置せずに済みます。多くの場合、相談機関側も再相談を歓迎しています。

④ 別の窓口に相談してみる

もし今の説明に納得がいかなかったり、もっと詳しく知りたいと感じたなら、別の窓口に改めて相談してみるというのも、まったく悪いことではありません。

セカンドオピニオンは、医療でもよく使われる、当たり前の選択肢の一つです。

地域の保健センター、かかりつけの小児科、別の言語聴覚士など、相談先は一つに限られているわけではありません。

おわりに

勇気を出して相談に行かれたこと、そしてそのモヤモヤをこうして言葉にできたこと自体が、お子さんのために大切な一歩です。

「おうちでトレーニング」は、見放された結果ではなく、専門家が一緒に伴走していくための一つの提案です。

分からないことは、遠慮なく聞き返していいんです。

 

次回は、その「おうちトレーニング」を実際にどうやっていくか、やりすぎ注意点も含めて具体的にお話しします。