口・舌・感覚の発達から考える原因
「言葉は増えてきたのに、何を言っているのか分かりにくい」
「同じ年の子と比べると、発音が幼い気がする」
お子さんの発音がはっきりしないと、つい「このままで大丈夫?」と心配になりますよね。
実は発音には、舌や口の動き、そして感覚の発達が深く関係しています。
この記事では、発音が不明瞭になる理由を
「口の使い方」「構音(こうおん)」「感覚」の視点から、やさしく解説します。
発音は「頭」だけでなく「体」で覚えていく
発音というと、「正しい音を覚えていないから」と思われがちですが、
実際には口・舌・あご・唇をどう動かすかという、体の使い方が大きな土台になっています。
例えば
- 舌をどこに当てるか
- どのくらい力を入れるか
- 空気をどう出すか
こうした動きは、感覚を通して身についていくものです。
舌の発達が未熟だと起こりやすいこと
舌は、とても細かく複雑な動きをする器官です。
舌の発達がゆっくりな場合、次のような特徴が見られることがあります。
- 舌を上あごにつける動きが苦手
- 舌を左右・前後に分けて動かしにくい
- いつも舌が口の奥に引っ込んでいる
この状態だと、
「か行」「さ行」「た行」「ら行」など
舌の位置が重要な音が不明瞭になりやすくなります。
「構音(こうおん)」ってなに?
専門的には、音を作る仕組みを構音(こうおん)と呼びます。
簡単に言うと、
口・舌・唇・あごを使って音を作ること
構音が安定していないと、
音を「知っていても」「言おうとしても」、正しく出せません。
つまり、
理解や知能の問題ではないケースも多いのです。
見落とされやすい「感覚」の発達
発音の指導でよくあるのが、
「舌をここにつけて」「もっと口を開けて」と形だけ教えること。
でも実は、舌の位置や動きは
感覚的に分かるようになることがとても大切です。
感覚の発達がゆっくりな子は、
- 舌がどこに触れているか分かりにくい
- 動かしているつもりでも、実際は動いていない
- 他人に言われても「違い」に気づきにくい
ということが起こります。
そのため、何度注意されても発音が変わらない、ということも珍しくありません。
「言い直させる」だけでは改善しにくい理由
「違うよ、もう一回言って」
「ちゃんと発音して」
こうした声かけは、一見よさそうに見えますが、
舌や感覚の準備が整っていない場合
本人にはどう直せばいいか分からないことが多いです。
結果として
- 話すこと自体が嫌になる
- 自信をなくす
につながることもあります。
発音は“成長の途中”のことも多い
発音の発達には個人差があり、
年齢とともに自然に整ってくる音もたくさんあります。
大切なのは、
- 今どの段階にいるのか
- 口や舌の使い方に無理がないか
- 感覚の土台が育っているか
を、焦らず見ていくことです。
まとめ|発音がはっきりしない理由はひとつじゃない
発音がはっきりしない背景には、
- 舌の発達
- 口の使い方
- 構音の未熟さ
- 感覚の育ち
といった、体の発達の側面が関係していることがあります。
「まだ練習が足りないだけ」
「やる気の問題」
と決めつけず、
お子さんの“今の発達段階”を知ることが、いちばんの近道です。

