「言葉は理解しているのに話さない」子どもに起きていること──考えられる理由と家庭でできる関わり

ことばの発達



「こちらの言っていることは分かっているのに、なかなか言葉が出ない」

そんな様子を見ると、発達の問題なのではと不安になる保護者は少なくありません。

しかし、理解している=話せる準備が進んでいる途中であることも多く、必ずしも異常とは限りません。

この記事では、「理解しているのに話さない」子どもに起きていることを、発達の視点からやさしく解説します。

 

 

「理解している」とはどういう状態?

 

 

子どもが
・指示に従える
・絵本の内容が分かっている
・質問に行動で答えられる


といった様子を見せる場合、言葉の理解(受容言語)は育っています。

 

 

言葉の発達には

  • 理解する力(受容言語)
  • 話す力(表出言語)

 

という2つの側面があり、この2つは同時に伸びるとは限りません

 

 

理解しているのに話さない主な理由

 

 

① 話す準備がまだ整っていない

 

 

言葉を話すには、

  • 口や舌を動かす運動
  • 音をまねる力
  • 言いたい気持ちを言葉に変換する力

 

 

など、複数の発達が必要です。

 


理解が先に伸び、話す準備が追いついていないケースは珍しくありません。

 

 

② インプットが多く、アウトプットが慎重



よく観察し、理解してから話そうとするタイプの子は、
「分かっているけれど、確信が持てるまで話さない」ことがあります。
性格傾向による沈黙期とも言えます。

 

 

③ 伝わってしまっている

 

 

指差しや身振り、親が先回りしてくれる環境では、
「話さなくても通じる」経験が積み重なります。
これは悪いことではありませんが、言葉を使う必然性が減る要因になります。

 

 

④ 発達特性が関係する場合



理解と言葉の表出に差が大きい場合、

  • 言語発達遅滞
  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • 聴覚・口腔機能の課題



などが関係することもあります。


ただし、「理解している=重い障害」という短絡的判断は禁物です。

家庭でできる関わり方

無理に言わせない



「言ってごらん」「なんて言うの?」を繰り返すと、
言葉へのハードルが上がることがあります。

 

親が言葉を添える



子どもの行動に
「ジュース飲みたいんだね」
「赤い車、あったね」
代弁するように言葉を重ねることで、
理解している言葉と音が結びつきやすくなります。

 

選択肢を提示する



「どっち?」と
「りんご?バナナ?」
のように選ばせると、発語につながりやすくなります。

受診・相談の目安



以下が重なる場合は、専門家への相談を検討してもよいでしょう。

  • 2歳後半〜3歳で意味のある言葉がほとんど出ない
  • 呼びかけへの反応が弱い
  • ことば以外のやりとりも少ない

自治体の発達相談、言語聴覚士への相談がおすすめです。

 

 

まとめ



「理解しているのに話さない」は、
言葉が育っていないのではなく、育ち方の順番の問題であることが多くあります。

焦らず、比べず、その子のペースを支える関わりが、言葉の芽を伸ばします。



ここまで読んで、
「理解しているのに話さない」
その姿に、少し安心した反面、
やっぱり不安が残った方もいるかもしれません。

この相談は、
診断や評価を目的としたものではありません。
今のお子さんの状態を一緒に整理し、
ご家庭でできる関わり方を考える時間です。

今すぐでなくても大丈夫です。
「一人で悩まなくていい場所がある」
そう思えたタイミングで、つながってください。


のびしろ相談室は、
「まだ話さない」「理解しているのに言葉が出ない」
そんなお子さんの様子に、ひとりで悩んでいる保護者のための相談室です。


診断や評価を急ぐ場所ではありません。
今のお子さんの姿を一緒に整理し、
何が育っていて、何を待てばいいのかを、
専門的な視点でやさしくお伝えします。

「相談するほどじゃないかも…」
そう感じている段階でも大丈夫です。

気持ちを言葉にするところから、はじめてみませんか。

のびしろ相談室