はじめに
「たくさん言わせれば、そのうち言えるようになる」
「舌の位置を教えれば直る」
「もう少し大きくなれば自然に治る」
発音に悩むお子さんを前に、こう思ったことはありませんか?
実はこれらは、多くのお母さんが信じてしまいやすい発音の思い込みです。
そしてこの思い込みが、知らないうちにお子さんの発音を遠回りさせてしまうことがあります。
私はこれまで、未就学児で発音が気になるというご相談を本当にたくさん受けてきました。
お母さんたちは、
- ネットで調べたり
- 本を読んだりして
「注意してはいけない」
「聞き返したらいけない」
「そうすると子どもが自信をなくす」
ということを、頭ではよく分かっています。
それでも実際には、
- 何度も同じ言い間違いを聞くうちにイライラしてしまう
- お子さんが本当に伝えたいことが、どうしても聞き取れない
- 思わず注意したり、聞き返してしまう
そんな現実を、涙ながらに相談されることも少なくありません。
これは、お母さんの関わり方が悪いわけでも、
我慢が足りないわけでもありません。
発音に対する見方そのものが、少しズレているだけなのです。
今回は、親が誤解しやすい発音について、現場目線でお話しします。
誤解① たくさん言わせれば言えるようになる
発音が気になると、
- もう一回言ってみよう
- 何回も練習しよう
- 毎日続ければそのうち…
そう思ってしまいますよね。
でも実際には、間違った発音のまま繰り返すことで、
その音の出し方が体に定着してしまうことがあります。
特に、
- さ行が全部た行っぽい
- か行がはっきりしない
- いつも同じ言い間違いをする
こうした場合は、「練習量」の問題ではありません。
発音は、回数よりも“準備”が大切です。
誤解② 舌の位置を教えれば直る
鏡を見せて、
「舌はここだよ」
「歯の後ろにつけて」
と教えた経験はありませんか?
もちろん、舌の動きが関係する音はあります。
でも、舌だけを動かそうとしても発音が整わないお子さんはとても多いです。
なぜなら、発音は
- 姿勢
- 体の安定
- 呼吸
- 音を聞き分ける力
こうした土台の上に成り立っているからです。
土台が不安定なまま舌だけ動かそうとすると、
かえって発音が崩れることもあります。
誤解③ 大きくなれば自然に治る
「様子を見ましょう」
「そのうち言えるようになりますよ」
そう言われて安心することもありますよね。
実際、成長とともに自然に整う発音もあります。
でも一方で、
- 音の誤り方が毎回同じ
- 本人は一生懸命なのに直らない
- 年齢が上がっても変化が少ない
こうした場合は、待つだけでは変わりにくいこともあります。
「待つ」こと自体が悪いのではなく、
待つかどうかを判断する視点が大切です。
親が変えるべきは「教え方」ではない
ここまで読んで、
「じゃあ、どう関わればいいの?」
と思われたかもしれません。
まず大切なのは、
教えることを増やすことではありません。
- この音、ちゃんと聞き分けられているかな?
- 1音として分かっているかな?
- 体は安定しているかな?
こうした視点で観察することが、発音の近道になります。
おわりに
発音が気になると、
どうしても「直さなきゃ」「教えなきゃ」と焦ってしまいます。
でも、発音は
親の関わり次第で、整いやすくも、こじれやすくもなるものです。
無理に練習を増やす前に、
まずは視点を少し変えてみてください。
それだけで、親子の関わりはぐっと楽になります。
次の記事では、
「発音=口だけじゃない」理由について、
もう少し詳しくお話しします。
